緋山酔恭の「価値論」 真理とはなに? 数学と物理の真理 ピタゴラスと無理数



価 値 論


q第四章

真理とはなに?


 




【 数学・物理学 編 】




ピタゴラスと無理数



古代ギリシアの哲学者であり、数学者でもあった

ピタゴラス(前570頃~?)は

ピタゴラス教団という宗教団体の教祖でもありました



ピタゴラス教団では、肉体は牢獄であるとし

地上での生活は魂の死を意味すると説いたとされます


そして

魂を浄化し、神性を回復させることが人生の目的であるとし

これにより輪廻転生より解放されると説いたといいいます



信徒は財産共有の共同生活をし、外部に排他的であったそうで

また肉食を禁じ、自己の魂を見つめる修行をしたとされます



西洋では「輪廻」を説く宗教というのが

あまりみられないというだけで

どこにでもある教団のように思えます




ところがおもしろいのは


ピタゴラスは

音楽の和音から惑星の軌道にいたるまでの万象が

一定の法則に支配されていること

さらにその法則が数式により表せることに気づき


「万物の根源は数である」

「万物は数の関係によって秩序づけられる」と唱え


この教団では「数」を崇めたというのです



そして、知恵を得ることこそが

解脱(輪廻より解放されること)の最上の道であるとし

数学、音楽、天文学、医学の研究を行ったといいます


とくに魂を鎮める音楽と

永遠不変の真理を求める数学を重視したそうです




この教団はとりわけ数学の研究の評価が高く


有名なピタゴラスの定理

〔 直角三角形で成り立つ

aの2乗+bの2乗=c(斜辺)の2乗 〕は

ピタゴラス本人あるいは彼の弟子の発見とされています


 
ウィキペディア




この他、教団の業績には

科学史に残るものも少なくないとされますが


これらの発見は

あくまで「解脱」という最上の目的のための

二次的な目的であったということです





ピタゴラスが

無理数の存在を発見した

弟子のヒッパソスを殺害したことは有名です



ヒッパソスは、無理数の存在を発見

さらに、2の平方根が無理数であることも

発見したといいます




その前に、数について述べます



「自然数」とは、正の整数 1、2、3… のことです


これに、0と、負の整数 -1、-2、-3…

を加えた総称が「整数」です


整数では0より小さい数が考えられるようになり

「今日は、昨日よりも気温がマイナス2℃だった」

という表現が可能になりました



しかし、整数だけだと

「1リットルの水を3人で分けたら1人当たり何リットルもらえるの?」

といったようなときに困ったことになります


そこで登場した1/3とか

分数であらわさられる「有理数」です



以上の「数」に「無理数」が加わり

実在するすべての数である「実数」とされています





無理数とは、小数点以下が、無限に続く数のうち

分数であらわせない数です


無理数の例には、中学数学ででくる

円周率(円周が直径の何倍になっているかという比率)があります


円周率を現す記号が、パイ(π)です

3.141592653589793238462643383279502884197169399375
1058209749445923078164 062862089986280348253421170679…




また、平方根とは2乗する前の数で

1の平方根は、1と-1

4の平方根は、2と-2

ですが

2の平方根は、1.414… の2乗、また-1.414… の2乗

3の平方根は、1.732… の2乗、また-1.732… の2乗

だったりします


そこで、平方根を現す記号がルート(√)です

1の平方根は、ルート1と、マイナスルート1

2の平方根は、ルート2と、マイナスルート2

と書けます


このうち2や3の平方根など、ルートの外せない数が

無理数になります






ピタゴラス教団が「数」と考えていたのは

整数と、整数比(分数)だけで

ピタゴラスは、全ての数は、整数の比で表せると説いていました


そしてピタゴラスは、万物万象は、数の秩序によって成り立つ

全てが、数によって現すことができる と考えました



ヒッパソスの発見は

≪万物は数である≫という教団の教えを

根底からくつがえすものであったため


ピタゴラスは、初めそれを異端宗教のように取り扱い


ヒッパソスを殺害または追放し

無理数の発見を隠そうとしたとされます



ヒッパソスは船上で無理数を発見し

ピュタゴラスの弟子たちにより

海に投げ出されたなんていう伝説もあります






数学は、美的感覚が必須の学問だといいます


例えば、直角三角形で成り立つ

aの2乗+bの2乗=c(斜辺)の2乗

という三平方の定理(ピタゴラスの定理)


直角三角形の形なんて無限にあるのに

全ての直角三角形がこの定理で成り立つのです


感動的!!? 美しすぎる!! 

ということのようです




数学者は

一見複雑な世界の中に

洗練された構造があると信じていて

それを発見することが仕事だと

考えているところがあるといいます



なので、世界の原理を解き明かしていく感覚が

彼らにとっての嗅覚であり、美的感覚なわけです


無理数という汚い数の発見は

ピタゴラスの美的感覚からは

許せなかったのではないかとされています




現代数学とは?




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